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DATA - 検証更新 2026-09-23 シェア Discordで話す

KOで倒された次の試合は、本当に不利なのか

前回はレートがどれだけ当たるかを測った。今回は、当たらなくなる場所を探す。

「一度KOされた選手は、もう元には戻らない」。格闘技のファンなら何度も聞く話です。打撃で意識を刈られた経験は残り、次の試合でまた倒れる。本当でしょうか。

前回の記事では、このサイトのレートが実際の勝敗をどれだけ当てられるかを測りました。今回は逆のことをします。レートが当たらなくなる場所を探します。

測り方

使うのは、その試合の直前にサイトが持っていたレートだけです。試合ごとに両者のレートから期待勝率を計算し、グループごとに期待勝率の平均と実際の勝率を比べます。差がプラスならサイトはその選手たちを低く見積もっていた、マイナスなら高く見積もっていたことになります。

先に言っておくべきことがあります。このレートは、KOやTKOでの敗北を判定での敗北より重く扱います。倒された選手のレートは、その時点ですでに大きく下がっています。ここで測るのは「KO負けすると弱くなるか」ではなく、下げたあとの数字でもまだ足りていないか、です。

対象は、両者ともその試合までに5戦以上をレートに積み上げている試合に限りました。

36,516試合視点、1980年〜2026年

直前の試合試合数期待勝率実際の勝率差
KO・TKO負け4,25445.1%42.4%-2.7
サブミッション負け2,92443.0%41.8%-1.3
判定負け6,00447.8%47.7%-0.1
KO・TKO勝ち8,33452.9%54.0%+1.1
サブミッション勝ち6,07353.5%53.1%-0.4
判定勝ち8,92751.2%51.7%+0.5
倒された側だけに起きている

判定で負けた直後の選手について、レートはほぼ完璧です。差は0.1ポイント。ところがKOやTKOで倒された直後だけ、実際の勝率が期待を2.7ポイント下回ります。サブミッションで極められた場合はその中間です。

そして勝った側には同じことが起きていません。KO勝ちの直後は+1.1、サブミッション勝ちの直後は-0.4、判定勝ちの直後は+0.5。いずれもほぼゼロです。これは勢いの話ではありません。倒された側だけの話です。

この2.7ポイントはどれくらい確かか

KO・TKO負け後と判定負け後の差は2.6ポイントです。ひとつの試合が両コーナーぶんの2行として入るので、単純に数えると不確かさを小さく見積もってしまいます。試合を単位にして2,000回の再抽出を行い、保守的な側をとると、95%の範囲で0.7〜4.5ポイント。ゼロを含みません。

倒されたからか、休んだからか

直前の試合からの間隔で分ける(括弧内は試合数)

間隔KO・TKO負けの直後判定負けの直後
0〜6か月-1.4 (1,972)+1.0 (3,182)
6〜12か月-3.4 (1,461)+0.7 (1,959)
12〜24か月-4.7 (590)-6.5 (634)
24か月以上-4.9 (231)-5.3 (229)

12か月までは、決着の付き方で説明がつきます。KO負けの直後だけが沈み、判定負けの直後は沈みません。ところが12か月を超えると順序が入れ替わり、判定負けの直後のほうが悪くなります。この帯で効いているのはKOではなく、長く試合から離れた選手をレートが高く見すぎるという別の問題です。

したがって、この記事が言えるのは倒されたあとの1年間についてだけです。

時代のせいではない
年代KO・TKO負けの直後判定負けの直後
1990年代(参考値)-8.5 (69)+0.1 (91)
2000年代-2.1 (953)+1.5 (1,058)
2010年代-2.4 (2,067)+0.1 (3,021)
2020年代-3.5 (1,165)-1.3 (1,834)

1990年代は試合数が少なく参考値ですが、KO・TKO負け後と判定負け後の差は、4つの年代すべてで同じ向きです(順に 8.6 / 3.6 / 2.5 / 2.2ポイント)。近年のルールやレフェリングの変化だけで説明できるものではありません。

実際の試合で見る

Mirko Cro Cop 対 Cheick Kongo 、2007年9月8日。4か月前に Gabriel Gonzaga にKOで敗れた直後でした。レートは 2155 対 1650、期待勝率91.1%。判定で敗れています。

Eddie Alvarez 対 Timofey Nastyukhin 、2019年3月31日。8か月前に Dustin Poirier にTKOで敗れた直後。2153 対 1642、期待勝率91.4%。TKOで敗れました。

Junior dos Santos 対 Yorgan De Castro 、2022年5月20日。17か月前に Ciryl Gane にTKOで敗れた直後。2044 対 1536、期待勝率89.4%。TKOで敗れています。

逆の例も挙げておきます。 Yushin Okami 対 Kim Jae-young 、2023年12月2日。12か月前に Aung La Nsang にTKOで敗れた直後でしたが、1750 対 880、期待勝率93.3%で、判定勝ちしています。2.7ポイントというのはこういう大きさの話であって、個々の試合を言い当てるものではありません。

この数字から言えないこと

原因は分けられません。レートの下げ幅が足りないのか、倒されたこと自体に残るものがあるのか。どちらでも同じ数字になります。

マッチメイクは中立ではありません。KO負けした選手に次の試合が組まれる過程には、その試合を見た人の判断が入ります。これは「KO負けした選手一般」ではなく「KO負けのあとに試合を組まれた選手」の話です。

デビュー戦は別の問題です。レートに積み上げのない選手は、期待33.5%に対して実際21.5%と、12.0ポイント外れます。これはKOとは関係のない、情報不足による外れです。

年齢、計量、負傷、練習環境のデータは持っていません。原因を選手個人に帰することはできません。

それでもレートは変えません

この2.7ポイントを見て、KO負けの罰をもう一段重くすることはできます。しかしやりません。残差の原因が「下げ幅の不足」なのか「ダメージそのもの」なのか分けられないうちに係数をいじると、いま当たっているところまで一緒に壊れるからです。前回の記事で見たとおり、このレートは全体としてはよく当たっています。分からないものを分からないまま置いておくほうが、取り繕うより正確です。

分かったことは、使い方のほうに置きます。倒された直後の1年間の選手については、このサイトの数字を少し割り引いて読んでください。

【訂正】2026年9月20日 — 年代別の表が、記事の他の表とは異なる母集団(すべての決着試合)で計算されていました。他の表と同じ「両者5戦以上」で刷り直しています。4つの年代すべてで差が同じ向きである、という結論は変わりません。

本稿の数値は 2026年9月23日 時点のデータに基づきます。データは毎週更新されるため、最新の集計とは末尾の桁が異なる場合があります。