GOAT Index は選手にレートを付け、勝率を出しています。では、それは当たっているのか。65,639試合で確かめました。
この種の検証でいちばん簡単な間違いは、いま手元にある最新のレートを過去の試合に当てはめることです。それをやると、結果を知ったうえで予想したことになり、数字はいくらでもよく見えます。
ここで使うのはその試合が行われる直前のレートだけです。2015年の試合には2015年時点の値を、2026年の試合には2026年時点の値を使います。レーティングは試合を1つずつ順に処理して更新されるので、各時点での「そのときまでに分かっていたこと」がそのまま残っています。つまりこれは、過去に戻って予想し、答え合わせをした記録です。
対象は1980年から2026年までの、決着のついた65,639試合。引き分けと無効試合は除いています。
まず、両者とも5戦以上の経験がある試合だけを見ます(19,337試合)。理由は後で説明します。
8つの帯は、おおむねレート差が開くほど格上が勝ちます。400以上開けば82.2%が順当に決まる。ただし先頭の2帯は順序が入れ替わっています(51.4% と 51.1%)。差は0.3ポイントで、1,931試合と2,003試合ではこの逆転を区別できません。レート差が50を下回ると、レートは勝敗をほとんど予測していない、と読むべきです。
見落としてはいけないのは、レート差200でも格上は3回に1回負けることです。200という差は、現役P4Pでいえば10位と90位くらいの開きにあたります(上位ほど密集しているので、1位から200下なら17位あたりです)。それでも33.3%はひっくり返る。MMAはそういう競技です。
経験の条件を外して65,639試合すべてを見ると、様子が変わります。
150〜200が100〜150より低い。単調ではありません。そして400以上が32,366試合、全体の半分を占めています。
原因はデビュー戦の選手です。当サイトが表示しているレートは、推定値から確からしさを差し引いた保守的な値です。戦績が1つも無い選手は「まったく分からない」ので大きく差し引かれ、レートが650〜800あたりに置かれます。結果として「レート差400以上」の多くが、実力差ではなく情報量の差になっている。無名の選手がベテランに挑む構図です。
だからこの数字は「レートが優秀だ」ということの証拠にはなりません。「まだ何も分かっていない選手は、たいてい負ける」という当たり前のことを測っているだけです。経験のある選手どうしに絞った先ほどの表のほうが、レートそのものの性能を表しています。
順序だけでなく、数字そのものも検証できます。「勝率75%」と言った試合が、本当に75%勝っていたか。以下は全64,271試合が母数です(経験による絞り込みはしていません)。
なお、両者のレートが完全に一致する1,368試合は、この表から除いています。どちらが格上でもないため、「格上が勝ったか」を数えられないからです。うち1,225試合は両者ともデビュー戦で、レートが初期値のまま動いていません。
表はおおむね揃っています。ずれが目立つのは端で、期待勝率90%以上の試合では、実際の勝率が4.4ポイント下回ります。中間の3帯のずれは1.9ポイント以内、接戦帯も1.0ポイントで、向きは一定しません。このレートは大差の試合で格上を買いかぶる傾向があり、それ以外の帯では大きな偏りを持ちません。
全体の精度をBrierスコア(0に近いほど良い、常に50%と答えると0.25)で見ると0.1911。何も知らずに予想するよりは明確に良いが、完璧からは遠い。
同じ検証を GOAT Index Boxing の90,562試合(1904年〜、レートが完全に一致する試合を除く)でも行いました。MMAの表と同じ基準で揃えています。
ボクシングでも、どの帯でも実際の勝率が予測を上回ります。中間の帯で9ポイント前後。決着した試合の79.7%がレート差400以上で、その多くは記録に一度しか現れない相手です。
レート差200〜300での格上の勝率は、MMA が66.7%、ボクシングが70.7%(いずれも両者5戦以上・同じ基準)。ボクシングのほうが格上が勝ちますが、差は4.0ポイントです。理由はこの数字からは分かりません。
両者ともその試合までに5戦以上を積み上げている試合に限ると、ボクシングの5帯のずれは最大1.0ポイントになります(+0.7 / -0.2 / 0.0 / +0.4 / +1.0)。弱気はレートの性質ではなく、母集団の性質でした。記録に一度しか現れない相手には初期値が与えられ、サイトはその選手を平均的な選手として扱います。実際にはそうではない。その差が、全試合の表を押し上げていました。
両者とも5戦以上の経験がある試合のうち、レート差が最も大きくて下位が勝った7試合です。
正直に書いておきます。
レーティングの計算にはこれらの試合結果が使われています。予測時点の情報だけを使ってはいますが、モデルの設計そのものは全期間のデータを見ながら決めました。完全に独立した検証ではありません。
戦績データはWikipediaの記載に依存します。記事側の誤りはそのまま入ります。
古い時代ほどデータが薄く、1990年代のサンプルは2,369試合しかありません。
ここで測ったのは「順序」と「確率の校正」だけです。誰が強いかという問いに答えたわけではありません。
計算の中身についてはランキングの作り方に書いています。勝敗予想の的中率は予想の的中率で公開しています。
【訂正】2026年9月20日 — 校正表の「50〜60%」の行に誤りがありました。両者のレートが完全に一致する1,371試合を、格上が勝った試合として数えていたため、実際の勝率が高く出ていました。該当試合を除外して算出し直し、58.0%(+3.5)を53.8%(−1.2)に訂正しています。あわせて本文の記述も改めました。
【訂正】2026年9月21日 — ボクシング側の数値に誤りがありました。両者のレートが完全に一致する試合を格上の勝ちとして数えていたため、50〜60%帯の実際の勝率が72.0%と高く出ていました(正しくは57.4%)。これはMMA側で先に訂正したものと同じ誤りです。あわせて、試合数・対象年・レート差400以上の割合を現在のデータに更新し、抜けていた70〜80%の帯を追加しました。レート差200〜300の比較も「MMA 66.4%・ボクシング 66.8%」から「MMA 66.4%・ボクシング 76.4%」に改めています。結論が変わる訂正です。
【訂正】2026年9月23日 — 本稿のMMAの表とボクシングの表が、異なる基準のレート差で作られていました(MMAは確からしさの幅を差し引いた値、ボクシングは差し引く前の値)。本文の説明は差し引いた側の理屈で書かれていたため、表と文章が食い違っていました。ボクシングの表を同じ基準で作り直し、2競技の比較も改めています。あわせて、校正表の「50〜60%」の行で予測の平均だけが別の母数から計算されていた点を直し、経験のある者どうしに絞った表を新たに加え、データを最新に更新しました。
本稿の数値は 2026年9月23日 時点のデータに基づきます。データは毎週更新されるため、最新の集計とは末尾の桁が異なる場合があります。